冬のエネルギー"需給"の実態(下)-バイオマス、アンモニア
【バイオマス】 木質ペレットの主要な輸出国であるロシアのウクライナ侵攻が長期化し、欧州を中心に品不足が解消されていない。欧州では地理的に遠い東南アジアからの調達にも動いており、そのしわ寄せが日本や韓国といった北東アジアの需要国にも波及している。日本向けの東南アジアの船積み価格はトンあたり200ドルを超え、4月ころから4割以上も値上がりしている。 PKS(パーム椰子殻)は需要が堅調に推移。一部では、品薄感の強い木質ペレットの代替として買付けを模索するプレーヤーもいるようだ。また、主要な輸出国であるインドネシアでは輸出されるPKSに課される関税が引き上げられ、価格上昇につながる可能性がある。マレーシアでは雨季によるパーム椰子の低収穫期を迎え、PKSの収量も低下する見通し。いまのところ価格の下げ余地は限られている。 秋口に入り、欧州ではアンモニア工場の再開の動きが出てきた。ロシアのウクライナ侵攻で黒海出しは依然として停止したままだが、原料になるガス価格が下落しているためだ。また、北半球では秋肥の需要が終わり、不需要期に入ったこともあって下げ局面でも積極的な買いは入らない。4月上旬に1,150ドルだったFOB中東は、11月中旬には875ドルまで下落した。 ただ、このままアンモニア価格が一本調子に下がるかといえば、大方の市場関係者は「ガス価格次第」という。今後、本格的な冬を迎えて暖房需要がさらに高まれば、ガス価格が再度上昇するとの見方が根強い。これに連動して、アンモニア価格も上昇する可能性は極めて高い。 日本国内の場合、ガス価格に加えて為替の問題も大きい。対米ドルで円安が進行したため、輸入価格全般が押し上げられている。10月下旬に1ドル150円台まで下落した円も11月中旬には同138円台まで円高に修正されたが、日本が低金利政策を堅持する以上、売り圧力は強い。このため、国内のアンモニア価格も為替次第では一段と上昇する可能性を指摘する声が出ている。
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