新春特集=原油調整金とは何か
2020年に国内市場で話題となった「中東産の原油公式販売価格」とはなにか。改めてまとめてみたい。
中東の産油国各国が設定する公式販売価格はOSPと呼ばれている。OSP とはOfficial Selling Priceの略語だ。このOSPのうち、サウジアラビア国営サウジアラムコが設定する価格が大きな影響力を持つ。サウジアラビア産原油のOSPはドバイ原油とオマーン原油の平均価格に調整金を加味したものだ。主要油種のアラブライト原油(AL)のOSPは、前月のドバイペーパー価格の限月格差動向を反映し、設定される(下記グラフ)。これを軸とし、軽質油種や中重質油種はアジア地区でそれぞれ得率の高い石油製品の精製マージン、さらに競合油種のスポット動向も考慮し、設定される。ただし、市場関係者間でその正式な決定要因は分からないままだ。サウジアラムコだけが知るブラックボックスとも言える。
中東産原油は、月初めにまずサウジアラムコがOSPを設定し、それを受けて他国の国営石油会社がOSPを設定する慣例となっており、その変動幅もサウジアラビア産原油OSPに追随する傾向にある。以下、主軸となるALの動向を中心に見ていく。
2020年の主要油種OSP動向は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うエネルギー需要の減退、さらに石油輸出国機構(OPEC)加盟、非加盟国による協調減産の動きを反映する動きとなった。中国に端を発する新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大するにつれ、原油相場も大きく下落した。また、需要も急激に低下したため、3月にOPECプラスが協調減産を巡り協議を行った。しかし、この協議が決裂したことで3月末からサウジアラビアを含む産油国が一斉に増産に舵を切り、シェア確保のため4月積みOSPは前月から6ドルと大幅に引き下げられた。
その後も原油需要が細る反面、増産が続いたため需給悪化が進み、5月積みOSPも前月に引き続き大幅に下方修正された。新型コロナの感染拡大による経済への影響は甚大で、原油需要が縮小するとともに、ドバイ原油の価格も急落。これに対処すべくOPECプラスは5月初会合で日量970万バレルという大幅な協調減産で合意した。
また、夏場に入ると、新型コロナの感染拡大はやや緩和したほか、供給削減で需給が改善するとの見方からOSPは大きく引き上げられた。OPECプラスは8月から減産幅を日量770万バレルに縮小したが、協調減産の継続が好感され、需給の改善が見られた。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大がいつまで続くか不透明であり、秋頃から再びドバイ原油価格と製品需要は低迷し、OSPは再度マイナス圏に沈んだ。冬場を迎え新型コロナワクチンの開発や緊急使用の承認などを支援材料に原油価格が上昇する一方、欧米を中心に感染が再拡大したことに油需要は中国やインドなど、一部の需要国頼みの状況に陥り、大きな需給改善は見られなかった。これを受けOSPも小幅な変動に終始している。