ジクシス=「斜陽」に負けない取り組みを ~関西・中国支店の姿勢から
厚生労働省が昨年12月に発表した人口動態統計で、人口の増減を示す自然増減は、愛媛県松山市の人口にほぼ等しい、51万2,000人の減少となった。人口の減少はエネルギー需要の後退に直結する。加えて、機器の高効率化や省エネ志向の高まりで、化石燃料由来のエネルギー消費量は落ち込む一方だ。経済産業省の『エネルギー白書2019』によれば、石油製品の販売量は2017年度に約1億7,474万キロリットルと、10年前の2007年度から比べて20%減少した。さらに、同省の『2019~2023年度石油製品需要見通し(案)』では、燃料油の需要が2018年度から2023年度までの6年間で6.4%減少すると見込まれている。
時代の趨勢のなかで特定の商品が衰退していくのはやむを得ないところだが、依然として多くの人々がガソリンや灯油の販売で生計を立てているのもまた事実だ。液化石油ガス(LPG)の業界も、国内では需要減少の危機にさらされている。しかし、右肩下がりの環境に言い訳を求めず、毅然と拳を構える企業もある。その一つ、LPG元売りのジクシス関西・中国支店長を務める横山洋紀氏に話を聞いた。
ジクシスが強みとする家庭業務用LPGの販売量は、2023年度に2018年度比5.1%減少すると予想されている(※経済産業省『2019~2023年度石油製品需要見通し(案)』)。しかし、横山支店長はすべてのLPG関連企業がまんべんなく業績を落とすわけではないことに着目する。
「ガソリン需要が減った時も、販売数量を増やし、会社の規模を大きくしたガソリンスタンドがあった。ジクシスとしては、顧客である地場の小規模ディーラーのなかにそういった勝ち組をどれだけ育てられるかが大事。そのためにジクシスはスケールメリットを活かした営業を展開している」。
ジクシスは2015年に昭和シェル石油、住友商事、コスモ石油ガス、東燃ゼネラルのLPG元売り4社が合併して誕生。その後、石油元売りの再編に伴って、株主は住友商事、コスモエネルギーホールディングス、出光興産の3社に変わったが、現在はLPGの国内販売量で業界3位に入る、大手元売りとしての位置を確立した。
もともと昭和シェルに長らく務めた横山支店長は、当時と現在を対比して語る。「昭シェル時代はほかにもLPG元売りが多く存在していて、販売数量を伸ばすために、時にはゲリラ的なスポット販売を仕掛けることがあった。しかし、今はジクシスという大きな会社になったので、横綱相撲を取るように心がけている」。
ジクシスは現在、同社の特約店が水まわりトラブルの応急措置や税務相談など、損害保険の生活関連サービスを顧客に提供できる体制を整えている。LPG以外の生活の場面でも、ディーラーが消費者を囲いやすくする戦略だ。これもジクシスという大きな組織だから実現できたことだが、あくまで大事なのは、顧客である地場ディーラーとのつながりだと横山支店長は強調する。
「大切なのは既存の顧客とのコミュニケーション。需要の減少が避けられないなかで、継続的な取引を保つために、顧客との意思疎通は欠かせない」。
関西・中部支店ではジクシス全体のLPG取扱量二百数十万トンのうち、10%強をカバーしている。ただ、顧客を回る営業マンは5名と少数精鋭の体制だ。人数が限られているなかでも顧客からの信頼を得られるよう、組織としても個人としても光るものが求められる。
「諸先輩方の培ってきた遺産を活用する一方で、個人の人間力やそれぞれの担当の持つ色を出していくのがこの支店の営業スタイル。顧客へのちょっとしたアドバイスが積み重なれば、新規開拓への道も拓ける」。
商人の町・堺を主戦場に、10府県を股にかける関西・中国支店の前向きな姿勢は、暖冬で需要低迷に苦しむLPG業界の関係者を勇気づけるだろう。業界の規模が縮小していくなかで、生存競争が激化の一途を辿っていくことは必至だ。しかし、斜陽の状況でこそ、心を燃やせるか。横山支店長の柔和な瞳の奥には、成長の手がかりを探し続ける、確かな熱さが感じられた。