記者の眼記者の眼

第263回 (2024年9月18日)

 数えたわけではないが、最低5回は観ている。ジブリの名作『天空の城ラピュタ』だ。先日テレビで再放送していたのをまた観た。ストーリー展開、細かいセリフ、結末まで先読みできてしまうが、それでも最後まで観てしまうのは、そのたびに視点が変わるからだろう。

 

 昔は主人公パズーの奮闘ぶりに心を動かされたものだが、今回は作中の「飛行石」に興味が湧いた。高さ1メートルほどの飛行石の結晶は巨大な城を数百年間、天空に浮かせ続ける力を持つ。クライマックスでは例の滅びの言葉で崩れ落ちる城を尻目に、大樹をまとって宇宙の彼方まで悠々と飛び去って行く。

 

 とてつもないエネルギーである。これほど膨大なエネルギーを無尽蔵に、それも温室効果ガスや人体に有害な物質を大気にまき散らすことなく放ち続ける。そんなものが自然界に存在していたとすれば、人類に多大な恩恵をもたらすにちがいない。

 

 一方、エネルギーは他者を支配するためにしばしば利用され、人類に害悪ももたらしてきた。飛行石の力を手中に収め、世界征服をたくらむラピュタ王家の子孫ムスカの凶暴な野心を掻き立てたのもエネルギーが持つ魔力だということも忘れずにおきたい。

 

 ちなみに、スウィフトの『ガリバー旅行記』に出てくるラピュタの王族や人民は数学と音楽にしか関心がない。エネルギーの源である太陽は毎日光線を出しているので、「やがて蠟燭のように溶けてなくなる」などと無用な心配ばかりしているという。

  

(須藤)

 

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