記者の眼記者の眼

第259回 (2024年8月21日)

 パリオリンピックが11日、閉幕した。世界中から最高峰の競技者が集い、熱い闘いが繰り広げられた。ある者は勝利し、ある者は敗れ、4年後のロサンゼルス大会に向けて再びスタートを切った。

 

 今回のオリンピックは、地球温暖化の進行を抑えるため、カーボンニュートラルな競技大会を標榜したことでも注目を集めた。具体的には、大会に関連して排出されるCO2などの温室効果ガスを、これまでの大会と比較して50%にするというものだ。

 

 ただ、実際に蓋を開けてみると、食料持続性をテーマにした選手村の食事の不味さや、環境に配慮するがゆえに快適とは言い難い宿舎、トライアスロンの会場となったセーヌ川の水質問題など、競技以外の部分で耳目を集める結果となった。

 

 地球温暖化が論じられるときに気になるのが、立場によって損益が生じる点だ。今回のオリンピックで言えば、運営側は環境に配慮を見せることでスポンサーから莫大な契約金を得る一方、参加者は質素な食事や宿舎に耐えることを強いられた。

 

 脱炭素エネルギーに関しても同様だ。新たな商機を狙う供給者の宣伝文句のなかに、代替燃料の使用に伴うコスト増が明示されていることはほとんどない。最終的には地球環境の保全につながる行為なので、みんなの利益になるはずだが、コストを負担するのは我々消費者だ。夢の代替燃料が存在しない今、地球も大事だけど財布も大事。批判的な視点を忘れないでいたい。

 

(小泉)

 

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