記者の眼記者の眼

第257回 (2024年8月7日)

 「そのバス路線、廃止になっています。」

 

 今夏に東北を旅したとき、2回ほど現地の案内所で言われた。勿論、下調べはしたし、バス会社のHPに時刻表は載っていたのだが、実際には営業していなかった。「いつからですか?」と聞くと、いずれも「2年ほど前ですね」との返事。つまり、2024年を待たずして、地方でバス路線の縮小が始まっていた。理由は、やはり新型コロナによる乗客の減少だという。

 

 代替手段として、1件目は鉄道を利用。2件目タクシーを呼ぶことになったが、料金が高額なうえ、行ったはいいが帰りの手段がない。ハイキングの山歩きルートもあったが、熊の出没情報もあり、結局諦めることにした。

 

 因みに、「皆さんはどうしていらっしゃるのですか」と聞くと、地元の人は自家用車、観光客はレンタカー、別の地域だったが桜の季節など観光シーズンだけ臨時便を運行することもあるそうだ。

 

 こうやってバス路線の廃止が進むと、民放の人気番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」もできなくなるな、と冗談半分に考えた。実際、以前放送した路線も、今は廃止になっているケースがあるようだ。半面、京都のようなオーバーツーリズムの都市では、住民がバスに乗れないという問題も起きている。利用客が多ければいいという訳でもない。

 

 バスという身近な公共交通機関が、いつの間にかこんなに利用しづらくなったのだろう。観光立国もいいが、庶民の足は置き去りにされていると実感した。

 

 

 

(工藤)

 

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