記者の眼記者の眼

第254回 (2024年7月17日)

 古都の奈良が好きで、毎年のように旅行で訪れている。海外からのインバウンド客で溢れ、喧噪感の強い京都で新幹線を降り、特急列車で小一時間ほど南下すると、静寂で趣のある奈良に到着する。昨年11月は室生寺という、インバウンド客も足を延ばさない山奥深くにある寺院を訪れた。しかし、そこで待ち受けていたのは、なんとカメムシの大群だった。地元の方は、「秋になってもぬくい(暖かい)けん、あちこち虫だらけやわ。こんなん初めて見たわ」と嘆いていた。虫の大量発生は林業や農業に多大なる被害をもたらす。地球温暖化の影響か、生態系のバランスが崩れつつあるのを肌で感じた。

 

 あれから8カ月が過ぎ、7月の日本列島はすでに35度を超える異例の猛暑に見舞われている。6月も例年より遅い梅雨入りとなり、全国の平均気温が6月としては過去2番目の高さを記録したばかりだ。政府の電気代補助が一時的に廃止されるタイミングでのエアコン使用増は、家計にとって大痛手だ。さらに今年の秋は、例年以上に厳しい残暑が続くとの見方が強い。こうした状況を映し、日本の電力先物市場では、9月物や10月物が真夏並みの価格で取引されている。

 

 もはや地球温暖化の進行は止められそうにない。その影響はこれからも、さまざまな姿に形を変え、否応なしに足元に忍び寄ってくるだろう。電力市場の動向はもちろんながら、普段の生活でも周りの環境に変化がないか、五感を研ぎ澄ませていたいと思う。

 

 

(狩野)

 

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