記者の眼記者の眼

第252回 (2024年7月3日)

 ジェット燃料が足りないと報じられている。とくに地方空港への供給は、製油所再編と転送船の人員不足、タンクローリーの運転手不足が重なり、減便止む無しという。SNS上では「増産すればよい」、「輸入すればよい」との声もあるが、そううまくはいかないのが世の常だ。

 

 製油所でジェット燃料を増産すれば、ガソリンや軽油も精製され、全体の需給バランスに響いてくる。輸入はどうだろうか。日本へ輸出する側も経済回復やインバウンド増で他国へ供給するほど潤沢でもないだろう。輸出国も増産すればガソリンや軽油が連産品として精製されるのは日本と一緒だ。

 

 国内ではガソリンや軽油小売価格の激変緩和として、多額の補助金が投入されている。岸田総理は6月21日夕刻、年内をめどに補助金制度を継続すると発表した。補助金で小売価格は安定しており、発表をそのまま受け取れば、年末まで大幅な値上げはないだろう。

 

 問題はその後だ。年明けに補助金を撤廃、あるいは軽減措置を導入した場合、ガソリンや軽油の小売価格は値上がりする。値上げは需要減となり、そうなれば石油製品を生産する元売り各社は製油所の精製バランスを見直さざるを得ない。

 

 ガソリンや軽油の需要減に対し、元売り各社はジェット燃料の増産を選択するか否か。円安が続く限りインバウンド需要は堅調だろう。小売価格の上昇抑制として導入された補助金は、いつの間にか製油所の精製バランスを左右する存在にまでなろうとしている。

  

(阿部)

 

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