記者の眼記者の眼

第248回 (2024年6月5日)

 先日、リムが四半期に1度発行しているエネルギー通信の記事作成に際し、トヨタ自動車の決算発表の記者会見をYouTubeで見て内容を確認した。ここ数年でオンラインでの情報公開が広がり、当社のように記者クラブに所属しないメディアでも内容を閲覧できるようになったことに改めてありがたみを感じた。

 

 会見では大手メディアの記者たちが様々な質問をしていたが、一部の記者は、トヨタの「現在」しか見ていないと思わせるような質問をしていたことに違和感を覚えた。足元の状況を逸早く報じたいという使命感は理解できるが、長期的な取り組みに対しても質問を投げかけてほしかった。カーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな技術を導入する「マルチパスウェイ戦略」の質問に対して、新任の佐藤社長が繰り返すように「これまでの戦略を一切変えずに進めている」と回答していたのが印象に残った。

 

 2020年当時、電気自動車(EV)シフトが世界的な潮流となったことは事実だが、大手メディアが、2020年当時はEVでない自動車は時代遅れ、また、最近では逆にEVシフトの後退は必至とも受け取れる決め打ちの論調を繰り返すことにミスリードと感じる時がある。

 

 最近のEVの退潮については、従来のエンジン車に比べて現時点では不完全であり、新たな価値を提供出来ていないからという部分が大きいはずだ。この前提を抜きにした質問は記者として恥ずかしい、と言うと大袈裟だろうか。日々の取材で自分も同じことをしていないか、しっかりとした質問で情報のキャッチボールを大事にしたいと思う。

 

 

( 吉井 )

 

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