記者の眼記者の眼

第216回 (2023年10月11日)

 新型コロナと同時に、季節外れのインフルエンザが猛威を振るい、小学校などで学級閉鎖が相次いでいるそうだ。ワクチン接種は冬場の流行期に備えて実施するのが通常で、過度なコロナ感染対策による免疫低下の影響もあり、まだ残暑が厳しい9月の感染流行は今年が初めてだという。

 

 自分が担当する電力市場でも似たようなことがあった。猛暑でエアコン需要が急増する8月は上昇の気配すらなかったスポット相場が、敬老の日を境に謎の急騰劇を演じたのだ。日本卸電力取引所(JEPX)の翌日渡し相場は、920日と21日の受け渡しで、今年の最高値となる50.00円を記録。市場関係者の多くは度肝を抜かれた。

 

 電力会社は毎年、夏場に火力発電所をフル稼働させ、需要がピークを過ぎる9月から定期点検を実施する。秋のうちに設備の不具合を修復し、冬場の需要期に備える必要があるためだ。しかし、今年(920日時点)は、東京で最高気温が30度に達する真夏日が過去最高の88日を記録したほか、35度以上の猛暑日も22日を数えるなど、季節外れの残暑に見舞われた。設備停止で電力供給が引き締まるなか、需要が例年以上に高止まりし、予想外の相場高騰を引き起こした。

 

 需要がどれほど強まろうとも、供給さえ確保されていれば、需給バランスは崩れない。逆に不需要期でも、想定外の理由で需給ギャップが生じれば、相場は一気に急変する。そんな一瞬一瞬を逃さぬよう、市場ウォッチャーの一員として目を光らせていたい。

 

(狩野)

 

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