記者の眼記者の眼

第214回 (2023年9月27日)

 昨年の夏、お昼に某有名カレー店に行ったところ、店員に「エアコンが故障中ですがよろしいでしょうか」と言われた。私は「はい、大丈夫です」と平然と答えたが、この選択が間違いだった。暑さに負けずカレーを掻き込むものの、思ったよりも辛いし、苦しい。徐々に失速し、汗ばみ、意識が朦朧とする。まさに地獄のような暑さだった。

 

 今夏も東京では猛暑日が続出し、酷暑となったが、電力需要は奇妙なことに異常なほど低調だった。昨夏は初の電力ひっ迫注意報が発令され、電力スポット価格も暴騰していた。

 

 今年は政府による節電要請が功を奏し、最需要期にもかかわらず、電力需要は想定以上に低調となった。電気代の高騰に対する嫌気が、一段と節電意識に拍車をかけたとみられる。市場関係者も「スパイクは起きない」と口を揃えて指摘。自分は在宅時にはエアコンをかなり使うが、以前から昼間は全く電気を付けないし、休日は近くのショッピングモールへ涼みに行く。こうした無意識な行動も節電に貢献したのだと思う。

 

 だが、9月半ば電力スポット価格は突如としてスパイクを起こす。まさに轍鮒(てっぷ)の急であった。東京エリアでは老朽化した火力発電の袖ケ浦3号機を再び稼働させ事なきを得た。

 

 最初のカレーの話に戻るが、私はどうにか完食することができた。強調するが、ぎりぎりだった。

 

 今年は暖冬との予報が出ているが、足元では徐々に燃料相場が騰勢を強めているほか、円安も急激に進んでいる。何事も油断大敵である。

 

(青山)

 

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