記者の眼記者の眼

第212回 (2023年9月13日)

 今年引越しをした。大手引越し業者にオンラインで見積もりを依頼すると、89,000円を提示された。100kmに満たない短距離の転居で、引越し前の間取りは1K。荷物は冷蔵庫や洗濯機、タンスなどがあるものの、多いとは言い難い。34月の繁忙期ならまだしも、時期は6月だった。当初34万円を想定していたので素直に「高いですね」と返すと、営業担当者は「人件費が高騰していて」と苦しそうに話した。

 

 新型コロナウイルスの影響も下火となり、転居数が増えているという。しかし、作業員の確保は困難を極めており、一日の稼働数が思うように上がらないのだ。そのなかでは1件当たりの単価を引き上げざるを得ない。ドライバー不足が懸念される「2024年問題」は引越し業界でも大きな課題となっており、これを見据えた値上げも広がっている。

 

 引越し時のサポートサービスなどを提供するリベロは、20233月に同社プラットフォーム「HAKOPLA」を通じたアンケート調査結果を発表した。このプラットフォームには現在130社の引越し業者が加盟している。調査によると、23年から単身、家族の引越し料金を引き上げる動きが広がっているという。半数以上の業者が23年の成約価格が22年より「高くなる」と答えた。また、来年にかけて受注可能件数が減少することで今後、いわゆる「引越し難民」が増加する可能性も調査では示唆された。

 

 わが身にも2024年問題の影響が迫っていることを実感した日だった。そのような状況にもかかわらず、担当者は私の納得できる価格まで料金を引き下げてくれた。感謝の念とともに、私は静かにオンライン通話を切った。

 

(和氣)

 

このコーナーに対するご意見、ご質問は、記者の眼まで 電話 03-3552-2411 メール info@rim-intelligence.co.jp