記者の眼記者の眼

第209回 (2023年8月23日)

 いま、とあるトレーディングカードゲームが巷の話題となっている。数週間前、このカードの新商品が発売となった。幼少期からの大ファンであるがゆえ、少年のころの眼差しを取り戻したからには、今回もその争奪戦に参加しないわけにはいかなかった。朝7時の販売開始には決して遅れるまい。最寄りのコンビニへ向かうと、すでに7人が列を成していた。その夜、某フリマサイトでは公式販売価格の3倍の値が付いていた。購入順序をめぐって暴力沙汰に発展した事例もあったようだ。こうした店頭での混乱を避けるため、大半の店が抽選制の販売形式を取った。

 

 風呂掃除で得た百円玉を手に握りしめ、近所の玩具店へと足を走らせた幼少時代が思い出される。当時は売り切れることなどなく、定価を支払えば確実に好きなだけ入手することができた。2018年ころに人気がエスカレートしてからは、国民的キャラクターを筆頭とした絶大なブランド力が確立された。1990年代に発売となった希少な1枚には、数百万円の価値が付いた。現代の人気が過去にまで波及している。

 

 この先、原油にも思わぬ価値が付くかもしれない。国家備蓄には、30年以上前の原油が貯蔵されていることも珍しくない。ベトナム産、インドネシア産原油、豪州産コンデンセートの一部などは近年、生産量が減少傾向にあるようだ。原油埋蔵量が世界的な減少トレンドに陥ったとき、その希少性が予想だにしないプレミアムを生むかもしれない。

 

(山根)

 

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