記者の眼記者の眼

第208回 (2023年8月16日)

 米国のバイデン大統領は6月、中国の習近平国家主席を「独裁者」と述べたという。ニュースは即日、全世界へ報道された。しかし、バイデン氏は発言の撤回をするつもりは毛頭ないようだ。日本は緊密な関係にある米国と歩調を合わせるだろうが、日本の政治家からは同様な発言は聞かれないのはなぜだろうか。

 

 トランプ前政権以降、米中の覇権争いは米国の最重要外交課題となった。その結果、バイデン政権においても、中国経済とのデカップリングを志向する政策が次々と断行された。政敵を作り対立軸を浮き彫りにしているのは、202411月に迫った大統領選挙も背景にありそうだ。

 

 圧倒的な生産力で安価な工業製品を世界に輸出し、世界第2位の経済大国になった中国。日本に対しては、デフレを輸出していたと言っても過言ではないだろう。それが、中国経済との切り離しによって、引き起こされたのがインフレだ。ロシアのウクライナ侵攻で、一時的に高騰していたエネルギー価格が元に戻ったなかで、インフレが収まらないのは米中対立が根本にあるからではないか。

 

 脱炭素化社会が政治課題となるなか、中国は電気自動車や(主要EVメーカーのほとんどは中国企業)、太陽光パネルの生産大国だ。中国を排除し新たな供給網を構築する理論は、環境にやさしいモノ作りにとってもコストの増加にほかならない。インフレになるのは必然で、不都合な真実である「デカップリングが生むインフレ」が、そこにはありそうだ。

 

(山田)

 

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