記者の眼記者の眼

第201回 (2023年6月28日)

 ここ数年、愛用するバックパックがある。お気に入りで、昨年、同じものを控えで購入した。先だって妹がこのバックパックを買おうと色違いで探したのだが、値段を見て驚愕した。昨年45,000円だったものが、6万円を超えていたのだ。30%以上の上昇だ。すでに食品や生活必需品など、あらゆるモノの価格がじわじわと上がっている。単価が低く数十円程度の値上げだったので、衝撃が少なかったのだ。スーパーではポイント欲しさに電子マネーで支払っているため、痛みを実感しにくかったこともある。6月には電気料金も値上げされたが、我が家の電気代が一気に1万円単位で上がったわけではない。

 

 物価高の要因として2022年2月のウクライナ侵攻を思い浮かべるが、経済学者の渡辺努氏は、インフレ傾向はその前から続いていたと指摘している。パンデミックで経済活動が低迷し、供給能力が減少した。その後、経済活動は戻り始めたものの、供給能力が追い付かず、全体的に需給はひっ迫している。原油相場についても侵攻後に大きく上がったのは確かだが、それ以前の202012月ころから上昇傾向は続いていた。油田開発に積極的だったトランプ政権から環境重視のバイデン政権へと移行することで、原油の需給ひっ迫が意識された可能性がある。

 

 衝撃的な出来事に目を奪われがちだが、実際にはよりシンプルな需給バランスで価格は決まっているようだ。人間は感情の動物。心がゆすぶられる情報には要注意だ。

 

(深水)

 

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