記者の眼記者の眼

第189回 (2023年3月29日)

 先日、中国の仲介により、イランとサウジアラビアが外交関係を正常化することで合意したとのニュースが新聞の一面に出ていた。敵対する両国の国交回復は大きな展開と思われるが、新聞の扱いが意外に小さいと感じた。今回の国交回復が米国の仲介なしだったため、日本のメディアが米国に配慮したのかとも感じた。

 

 今回の合意は、中東の安定に寄与し、国際社会にとっても良いニュースとみられるが、気になったのは、中国の政府高官が、「これは平和的交渉の勝利である」と発言したことだ。この発言はウクライナに武器の提供を続ける欧米を意識したものと捉えられており、西側対中国ロシアの対立が透けて見える。外交面でも中国の存在感が増しており、将来的に西側との対立が加速しないよう望む。

 

 私はリムで原油市場を担当している。アジアには世界各国から様々な原油が流入しており、当然ながら、マーケットは海外動向に敏感に反応する。原油市場でもウクライナ戦争が始まって以降、日韓の需要家がロシア産の購入を停止した一方、インドや中国はロシア産の購入を増やし、他地域からの輸入を減らした。これまでと構造ががらりと変わってしまった。

 

 米国の金融機関の倒産など、今後の世界情勢はこれまでにも増して不透明感が強い。世界の潮流が大きく変化する兆しが感じられるなか、今後原油市場がどうなっていくのか不明だが、原油という国際的な市場を担当できることは光栄なことだと思う。

 

 

(高木)

 

このコーナーに対するご意見、ご質問は、記者の眼まで 電話 03-3552-2411 メール info@rim-intelligence.co.jp