記者の眼記者の眼

第187回 (2023年3月15日)

 バレンタインデーの少し前。リムに入社して2カ月が経ったころ、一通のはがきが届いた。

 

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 1月の電気とガスの使用料の明細だった。「予想より5,000円高いな」。一杯飲んで気持ち良く帰宅した折のほろ苦い贈り物。酔いは一気に醒めた。かと言って寒さには耐えられない。「仕方ないか」と言い訳し、エアコンをつけ7畳の部屋を暖めた。

 

 ちょうど石油製品の取材を自分でも始めた時期だった。なぜ価格が上昇しているのか、この先、市況はどうなるのか。学生時代まで剣道しかしたことがなく、エネルギー業界に明るくない私にとって、取材で得られる情報は好奇心をくすぐる。

 

 上司と取引のシミュレーションゲームをやったこともある。購入するのは8月の冷やし中華。2月中旬で一杯1,000円として、半年後にはいくらに変動しているか。そのように商いの感覚をつかもうと試行錯誤してみるが、取材は一向に上手くいかない。どんな質問にも答えてくれる取材先には感謝の思いでいっぱいだ。

 

 そうしている間に3月になった。日は延びてきたが、夜は気温が下がる。軽く運動して体温を上げることで寒さをしのぐことにした。部屋の隅に置かれた竹刀を手に取り、デスクワークで丸みを帯びた背中と腹に力を入れスッと構えた。「素振りしたら天井にぶつけそう」。部屋の狭さを言い訳に竹刀をそっと収め、代わりに冷蔵庫から発泡酒を取り出した。「今日はこれで温まろう」。自分の甘やかし方は着実に上手くなっている。

 

(櫻井)

 

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