記者の眼記者の眼

第180回 (2023年1月25日)

 今年の干支である「卯(うさぎ)」は、その跳ねる姿に掛けて、飛躍という意味を表すという。干支が替わるたび、これから迎える新しい一年がいい年になることを祈願し、前向きな意味を掛けるのが習わしだ。

 

 成長という意味の「寅」が干支だった昨年も、いい年になるはずだった。しかし、振り返ってみると、ロシアのウクライナ侵攻や150円を超える32年ぶりの超円安など、さまざまなテールリスクが顕在化する格好となった。テールリスクとは、まれにしか起こらないはずの想定外の事態が発生するリスクを指す。しかし、想定外だったはずの事態はテールリスクの域を脱して日常化し、マーケットを翻弄するとともに、資源高や物価高という形で私たちの生活を脅かしている。

 

 足元では過度の円安が修正されつつあるものの、インフレ圧力は一段と強まっている。コロナ禍も収束の兆しが見えず、平穏な日常は失われたままだ。年始のテレビの経済番組で、米調査会社ユーラシア・グループが発表した2023年の「世界10大リスク」を特集していたが、思いも寄らぬテールリスクが急浮上する可能性もある。干支に願掛けをしていい年になるのが理想だが、安易な楽観論は禁物だ。いっそのこと、他人任せの願掛けはやめて、たとえどんなことが起きようとも、目の前の現実と向き合う覚悟が必要なのかもしれない。

 

 果たして一年後に振り返ってみたとき、今年はどんな年になっているだろう。杞憂が杞憂で終わればいいのだが。

  

(狩野)

 

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