記者の眼記者の眼

第179回 (2023年1月18日)

 大学時代に所属していた研究室の先生から新年の挨拶が届いた。昨年3月に先生は定年を迎え、その際は現役生や卒業生が集合し、最終講義と退官パーティーが開かれた。専門分野である生態系をテーマに、これまでの研究の軌跡を追った最終講義で先生から最後に一言。「山奥の土地を買いました。4月から東京を離れて暮らします。」先生からの新年の挨拶には、山林開拓中との近況報告とともにチェーンソーの写真が添えられていた。

 

 自然環境を研究する身として、脱炭素化社会の実現を残りの人生で体現したい。出来るだけ化石燃料に頼らない生活を一から作り上げる、とのこと。何十年も環境問題に取り組んできた研究者がそのような想いに行き着くのは自然なことかもしれない。しかし、私はその本気度に驚き、研究者の端くれとして数年、同じ分野で学んだ身として、あなたは環境問題とどう向き合うかと問われている気がした。

 

 リムの記者になり、エネルギーと環境問題、それぞれの課題や重要性を理解し考える機会は増えた。しかし、日々の業務で世界の最先端の情報に触れていても、自分自身はどうすべきか、自分の生活に落とし込んで考えを巡らせたことなど、これまで殆どなかったかもしれない。問いへの答えはまだみつからないが、エネルギー業界で働くひとりとして環境問題をどう解決し、どのような社会を形成したいか、まずはこの1年、問い続けていきたいと思う。

 

(柏原)

 

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