記者の眼記者の眼

第163回 (2022年9月14日)

 私が米国と日本に住んで感じるギャップの一つが、政治問題に対する人々の反応の違いだ。米国では選挙や主義主張を訴える場面で、主張を前面に出したTシャツを着るなどするが、日本ではなんとなく政治的な主張をすると忌避されるような雰囲気がある気がする。

 

 先日私はある政治問題について署名を行い、試しに署名サイトを家族に共有してみたところ、いわゆる既読スルーをされてしまった。家族という間柄でも政治的活動をすることが忌避されるのかと驚いた場面だった。

 

 日本はロシアのウクライナ侵攻後、原発依存度を低減する方針を転換し、来年夏以降に現在稼働している原発10基に加え、7基の追加再稼働に向けて動いている。

 

 大手都市ガス会社が続々と燃料費調整制度の上限撤廃を発表するなか、エネルギー自給率の低い日本ではエネルギー価格高騰が生活費に直結している。原発をすぐにでも再稼働して生活費を抑えたいと願う人も少なくないだろう。

 

 他方で、大学で地層学を研究する先生から、いかに地震大国である日本が原発を設置するのに向いていないかを力説されたことのある身としては、原発再稼働に危機感を覚える気持ちもある。きっと多くの日本人がこの狭間で揺れていることだろう。

 

 次世代を意識する年齢になり、今の生活と次世代に少しでもいい世界に住んで欲しいという思いを天秤にかけている。エネルギー業界に身を置くものとして、原発を含むエネルギー源を注視し続けていきたい。

 

(服部)

 

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