記者の眼記者の眼

第161回 (2022年8月31日)

 2022年は中央アジア諸国と日本政府が外交関係を樹立してから30周年になる。中央アジアとは、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの5カ国を指す。

 

 このうち、トルクメニスタン共和国には通称「地獄の門」という恐ろしげな名前の名所がある。地面に空いた巨大な穴の中で炎が燃え盛っており、まさに灼熱地獄への入り口のよう。これは自然にできたものではなく、誕生の背景には同国の特産品が絡んでいる。

 

 実はトルクメニスタンは屈指の天然ガス産出国で埋蔵量世界第4位とされる。同国では1959年に天然ガスの大規模な開発が始まり、以後開発が進められた。

 

 1971年、同国のダルヴァザ村でも天然ガスで満ちた洞窟が発見された。しかし調査中に採掘場所が崩落。穴から発生した有毒ガスを消失させようとした者が火を付けたために「地獄の門」が開いてしまった。計画ではすぐ火も消えるはずだったが、予想外に豊富なガス量だったため、その後50年間も燃え続けているという。

 

 トルクメニスタン産天然ガスの主な行き先は中国だが、トルクメニスタンは目下輸出先の多角化を図っている。ただ、同国の置かれる状況からその道のりは険しいとの見方が多いようだ。

 

 さて、先の「地獄の門」だがついに今年1月、同国の大統領が消火を指示した。現時点では続報を待つばかりだ。同国産の天然ガスが多くの国で使用されるか、地獄の門が閉じるか、果たしてどちらが先になるだろうか。

 

(原)

 

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