記者の眼記者の眼

第160回 (2022年8月24日)

 今年の夏は暑い。梅雨明けは早く、8月に入ってまた猛暑が戻ってきた。節電が呼びかけられ、スーパーの照明は落とされた。暗い店舗は東日本大震災のとき以来だ。呼びかけに応じて、自分も節電を試みることにした。まずは冷房だ。普段より設定温度を上げて、28度にした。日中は部屋の電気も消した。冷房効率を上げるためにカーテンも半分閉めた。これで準備万端だ。しかし、部屋は薄暗く蒸し暑い。本も読めない。ただぼんやりと時が過ぎるのを待つしかなかった。節電には限界がある。8月から電力会社による節電プログラムが始まったが、参加費2,000円をもらってもどこまで協力できるかは自信がもてない。

 

 関東地方では今年に入り、3月下旬と6月下旬の2回にわたり電力需給がひっ迫した。寒波や猛暑、発電所のトラブル、太陽光の出力低下などが要因だが、停電がいつ起こっても不思議ではないということになる。利用者側も停電の備えをするべきなのかもしれない。懐中電灯、電池、手回しラジオが定番だが、珍しいところではガスカセット式の自家発電機も売っている。

 

 一方でこの問題の根本的解決には、発電能力の増強が必要だ。脱炭素の流れに目をつぶり、安定運用できる火力発電所を増やすのか。賛否両論の原発再開か。太陽光や風力も選択肢の一つだろう。天災は忘れた頃にやってくると言ったのは100年前の寺田寅彦だ。すでに10年前の計画停電は忘却の彼方だが、停電も忘れた頃にやってくるのだ。

 

(深水)

 

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