記者の眼記者の眼

第159回 (2022年8月17日)

 シンガポールに住んで長い。コロナ禍による行動規制は5月以降、大きく緩和されたものの、今、市民が新たに直面する「禍」の1つが物価高だ。先日乗ったタクシーの運転手は、「Nasi Padangが一皿7.5シンガポールドル(以下ドル、約733)に上がっていて驚きましたよ。コロナ前は4ドル、昨年は5ドルだったのに」と嘆いた。運転手はマレー系シンガポール人。Nasi Padangは割安感もあり人気のある食べ物だ。ベドック(東区の住宅街)のフードコートでの価格とのことで、贅沢をしたわけではない。

 

 電気代も上がった。シンガポールの電気料金は1キロワット時あたり約0.32ドルと、2年前に比べ約25%高い。料金は3カ月ごとに改定されるが、次期も値上げがほぼ確定している。自由競争が国是のようなこの国で上限が設定されることはないだろう。

 

 物価上昇の原因として石油やガス、食用油の国際価格の高騰や米ドル高が挙げられよう。シンガポールは、政府が物価抑制として当初から政策金利を引き上げ、自国通貨の対米ドル下落を防止。インフレ率は近隣国より低い。近隣国政府も市民生活防衛のため国際批判を顧みず派手な行動に出る場合もある。インドネシアは一時、国内の食用油価格安定化のため国産パーム油の輸出を禁止した。マレーシアは食用鶏肉の輸出を停止している。

 

 石油・ガス・パーム油などの国際価格や外国為替はリムが日々報道するアイテム。これら市場が及ぼす日常生活への影響の大きさに驚くことがある。

 

(萩本)

 

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