記者の眼記者の眼

第155回 (2022年7月20日)

 私の住むシンガポールのマンションの屋上に最近、太陽光パネルが設置された。シンガポールでは、太陽光発電能力を増強する計画が進む。小さな島国では建物の屋上は貴重な設置場所だ。

 

 シンガポールは現時点で、発電用燃料は主に天然ガスに依存している。先日、自宅の電気料金の請求書を見て、値上がりしていることに気づいた。天然ガスの値段は原油価格に連動するため、光熱費の増加も原油高が影響したのだろう。

 

 ただ、原油がいつも高いわけではない。2020年以降、新型コロナウイルスが世界中で蔓延し、多くの国が都市封鎖などの移動制限措置を取った。経済は減速し、原油も需要急減で暴落した。サウジアラビアをはじめとする石油輸出国機構(OPEC)、ロシアなど非加盟国も含むOPECプラスは、相場を支えるため減産で合意した。

 

 その後、ワクチンが普及し、新型コロナは収まりつつあり、経済活動も徐々に回復している。これに伴い石油需要も急増。OPECプラスは減産規模を縮小したが、その幅は小さく、原油は21年初めから上昇した。また、ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧米諸国はロシア産原油の購入を削減。しかし、代替品の調達が必要で需給は逼迫し、原油はさらに高騰した。

 

 原油価格は今後も需給状況により変動を続ける。一方、このところの環境意識の高まりで、世界的に脱炭素の動きが加速している。マンション屋上の太陽光パネル同様、環境に優しい再生可能エネルギーもさらに普及するだろう。

 

 

(林 志勝)

 

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