記者の眼記者の眼

第154回 (2022年7月13日)

 石油化学製品の取材をしていて、このところ最も懸念している材料の一つが中国の新型コロナウイルス感染の状況だ。

 

 上海で3月末に都市封鎖(ロックダウン)が開始されて以降、中国の石油化学市況は悪化している。国内の物流や人の動きが制限され、最終製品などの工場の稼働が低下するため、石化製品の需要が減少するという格好だ。私が主に担当している塩ビ樹脂(PVC)市場では、中国国内の需要減少や相場の軟化から、輸出意欲が強まり、中国からの輸出品のオファーも下落している。このため、輸出先であるインドなどの相場まで押し下げられている。中国で需要が減少しているのは他の多くの石油化学製品も同様だ。

 

 上海のロックダウンは名目上61日に解除されたものの、その後も部分的な行動制限が続いている。上海では7月に入り再び感染者が増加しており、上海事務所で働く同僚も引き続き不安な日々を過ごしているようだ。他にも複数の地域で感染者の増加を受けた行動制限が実施されている。

 

 上海のロックダウンが解除されるまでは、「解除後に石油化学需要が回復するのでは」との市場関係者の期待感があった。ところが、実際には解除後も感染拡大が続き、市況は悪化の一途を辿っている印象だ。行動制限による、市民の生活レベル、経済活動レベル両面での影響の大きさは計り知れない。なんとか経済を止めずにコロナを封じ込める手立てが見つかることを願わずにいられない。

 

 

(田鎖)

 

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