記者の眼記者の眼

第153回 (2022年7月6日)

 

 先日レストランで友人とランチをした。以前は1,000円台で食べられたランチセットが3,000円以上に値上がりしていたうえ、量も少なくなっていた。ロシアのウクライナ侵攻以来、小麦などの食料品が値上がりしている影響が出ているようだ。

 

 食料品に留まらず、エネルギー価格も上昇しており、日本でもインフレの兆候がじわじわと出ている。原油業界では、欧州や日韓などがロシア産原油の購入を停止しているため、国際市場でロシア産以外の原油価格が軒並み高騰している。ロシア産の禁輸でロシア経済を孤立させ、戦費を断つ狙いがあるようだが、あまり効果が上がっていないとの情報もある。中国とインドが安価で大量のロシア産を輸入しているためだ。両国はその分、他の地域からの買付けを減らしているため、あるトレーダーは、「中東の軽質油種など、以前はインド勢がかなり買っていたが、今は全然買いがなく寂しい限り」と嘆く。

 

 ロシア産の価格は他の原油より大幅に割安だが、原油価格全般が高騰しているため、ロシア経済はそれほど困窮していなようだ。通貨ルーブルも侵攻当初こそ下落したが、今は上昇している。

 

 逆にロシア産原油の禁輸の影響で、割高な原油を調達している米国はガソリン高に苦しみ、欧州ではロシア産エネルギーの断絶で供給不安が根強く、石炭火力や原発への回帰もみられる。値上がりしたランチを食べながら、欧米と、ロシアや影で支える中国などとの対立が激化しないことを祈った。

 

(高木)

 

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