記者の眼記者の眼

第152回 (2022年6月29日)

 「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足で歩く動物は何か」。ギリシャ神話に出てくる怪物スフィンクスが通行人に出したとされる謎かけだ。答えは「人間」。赤ん坊は四つ這いで、長じると二本足で立ち、老いると杖を用いると。

 

 以前は「人間の手や杖は足ではない」と納得がいかなかったが、それは「足」の定義によると考えが変わった。広辞苑を引くと、足には「足首から下の部分」のほかに、「胴から下に分れ出て、からだを支え、また歩くのに使う部分」の意味がある。

 

 また、「動物の足のように、移動に使うもの」の意味もある。動物は生命を維持するのに必要な栄養を摂るために動き回る。動物が生きるための移動に使うものが足だとすれば、赤ん坊の手や杖もそれと認めなければならない。

 

 とりわけ人間にとっては「交通機関」の意味も重要だろう。人間はパンのみにて生くるものにあらず。行きたいところに行き、会いたい人に会い、見たいものを見て、聴きたいものを聴き、伝えたいことを伝えるために移動する。そうした移動を容易にする自動車、バイク、鉄道、飛行機、船などの交通機関は、人間が豊かに生きるために不可欠な足だ。

 

 そうなると交通機関の動力となる石油価格の高騰は頭が痛い問題だ。ガソリン代が嵩み、飛行機の利用には燃料サーチャージの支払いが求められる。精神的な充足を得ようとすると、生活が圧迫される。巨大スフィンクス像を見にエジプトへ足を運びたいが、足が出そうだ。

 

(須藤)

 

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