記者の眼記者の眼

第144回 (2022年4月27日)

 スーパーで昨日まで1100円で売っていたリンゴが、今日になっていきなり80万円に値上がりしていたら・・・よほどのインフレに見舞われた途上国を除き、現実社会ではほぼありえないだろう。しかし、そのありえないことが頻繁に起こるのが電力のスポット市場だ。

 

 電力は基本的に貯蔵ができない。その場で供給されたものをその場で使わないといけないという性質がある。ロシアのウクライナ侵攻で高騰した原油やガスを燃やして発電所が作った電力も、使う人がいなければ安値で叩き売られる。好天の日は太陽光発電所から大量の余剰電力が生まれ、下限値の0.01(キロワット時当たり)を付けることも少なくない。

 

 逆に電力が足りなくなれば、停電という最悪の事態を防ぐため、供給確保を優先した赤字覚悟の買いが入る。今冬も80円の高値が頻発したほか、需給逼迫が深刻だった昨冬には250円を突破したこともあった。100円のリンゴが250万円に大暴騰した計算だ。

 

 記者としての立場上、日々の相場動向に一喜一憂は禁物だ。冷静な目でマーケットを読者に伝えることが求められる。しかし、電力が高騰した日や暴落した日は、ユーザーや発電会社の苦悩を思い心が痛む。原油やガスは値動きが激しく、しばらく電力も乱高下が続くだろう。たとえ0.01円になっても、経済の血液となる貴重な電力であることに変わりはない。そんな電力を無駄にせぬよう、せめて日々の生活で節電に務めねば、と自分に言い聞かせる次第だ。

 

  

(狩野)

 

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