記者の眼記者の眼

第119回 (2021年5月26日)

 半月ほど前のことだ。59日の母の日に、今年は遠方の母や義母に会いに行くことは難しく、贈り物を近場の洋菓子店で見繕い送ることにした。隣接する生花店とのコラボレーションで、カーネーションとお菓子を組み合わせた「母の日セット」が、店内の1番目を引くスペースに飾られている。そのカーネーションを見て、ある記憶がよみがえった。

 

 年が明ける前、旧友数人とオンラインで雑談をしていた。さまざまな業種に散らばった旧友が身の上話をするなかで、花き業界で働く友人が、「花を運ぶ船の運賃が高くて苦労している」とこぼした。5月の母の日に向け、南米の生産国からカーネーションを、また花の流通拠点であるオランダやタイなどからさまざまな花を輸入するのだが、コンテナ船のスペースがなかなか取れないというのだ。日本で1年に最も多くカーネーションが売れるその日に品薄にはできない。どうにかして国内外から調達しないといけない。世界的なコンテナ不足に伴う海上輸送運賃の高騰が母の日を脅かすとは、少々意外だった。

 

 そうして迎えた今年の母の日。近所の生花店は赤やピンクのカーネーションで華やぎ、多くの人が買い求めていた。どうやら私の町には無事にカーネーションが届いたようだ。その後の便りで、友人の会社もどうにかコンテナを確保し、無事に花を仕入れたと聞いた。母や義母への感謝とともに、担当者の苦労を心の中でねぎらった。

  

(犬塚)

 

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