記者の眼記者の眼

第117回 (2021年4月21日)

 エネルギー業界では『脱炭素』がトレンドだ。私自身も、これまでの石油製品レポートに加え、この4月から水素やアンモニア、排出権取引などを扱うクリーンエネルギーレポートの担当を兼務することになった。自分にとって未知の世界だけに、電気自動車や水素エネルギーの動向をどのように取材し、記事にまとめるか、日々、試行錯誤を繰り返している。

 

 もっとも、このまま脱炭素社会へと一気に進むのか、冷静に見る必要があると考えている。確かにテレビや新聞ではこのところ、二酸化炭素など地球温暖化ガスの排出を抑えるとされる太陽光、風力、水素やアンモニアによる発電、燃料電池車などを大々的に取り上げる機会が増えている。ただ、現時点では、水素やアンモニアの製造には化石燃料を原料として使うことも多いなど、必ずしも「地球にやさしい」とは言い切れない面もあるようだ。

 

 いずれはこうした技術が確立され、世の中の主流になるにしても、それまでには相当な時間がかかりそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、人々の生活が活気を取り戻した際、もうしばらくはガソリン、軽油、ジェット燃料など化石燃料にある程度頼らざるを得ない。

 

 温室効果ガスの排出を抑えつつ、化石エネルギーを有効活用する一方、新しい技術の開発を同時に進めるのが現実的だろう。こうした時代の転換点に、新旧エネルギー双方の動きを追うことができるのは、エネルギーを追う記者冥利に尽きる。

  

(横井)

 

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