記者の眼記者の眼

第110回 (2021年1月13日)

 年末年始に美味しい料理を食べ過ぎ、今ごろ自分の腹のぜい肉を指でつまみながら、嘆息を漏らす人も多いはず。ところで旨い料理とは何だろう。料理の旨い不味いは、見た目では判別しづらい場合がある。世の中には綺麗に盛り付けられた不味い料理、盛り付けは多少雑だが旨い料理があるからだ。いざその料理を口に運び、味の良悪を判断する際、それを味わう人間の味覚、嗜好、健康状態が重要な役割を果たすことは言うまでもない。

 

 インスタント食品やコンビニ弁当を常食する人が、昆布、削り節で取った出汁の滋味を識別することは難しく、食品添加物や化学調味料で味覚が形成されている人には、ファストフードこそが何よりのごちそうだろう。

 

 似たようなことが、文章についても言えそうだ。小説、評論、新聞など分野を問わず、巷にある文章は、表現力、文章・段落構成が例えしっかりしていても、中身の良悪は全く別の話だ。その内容の真贋を見分けるには、読者に一定水準以上の教養や知性、理性、嗜好が求められる。毎日食卓に並ぶ朝食をただ機械的に咀嚼するかの如く、宅配される新聞を何の疑問も無しに読み、「○○新聞に書いてあることは全て正しい」との思い込みの下、その内容を鵜呑みする人も少なくないのではないか。

 

 ところで、筆者は自分の料理の下手さと文章力の無さに長年辟易しているが、せめて今年も他人がつくった美味しい料理と素晴らしい文章にたくさん出合い、味わいたいと切に思う。

  

(小屋敷)

 

このコーナーに対するご意見、ご質問は、記者の眼まで 電話 03-3552-2411 メール info@rim-intelligence.co.jp